大阪体育大学剣道部

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2007年 02月 28日

朝日新聞(生活)2月25日版から転記

倒されても飛ばされても「もう一本」
真冬の早朝に繰り広げられる剣道の寒稽古。
大人たちにまじって挑む豆剣士たちがいた。
はたから見ているとびっくりするほどの厳しい「修行」だが、逃げ出したくならないの?

まだ真っ暗な午前5時。こうこうと明かりがつく体育館に、子どもたちが一礼して入ってきた。表情はこころなしか硬い。
大阪府熊取町の大阪体育大。名門剣道部の寒稽古は毎年この季節に15日間続く。部員以外にも門戸を開いており、2月中旬の最終日は総勢230人が参加。OBら年配ベテラン剣士にはじまり、大阪府内の剣道教室・道場に通う小中学生54人の姿があった。
暖冬とはいえ、日の出前は足が凍える。張りつめた空気の中「ワッショイ、ワッショイ」と、かけ声を早めながら体育館を裸足で走り出し、寒稽古が始まった。

堺市の2年生、奥野未鈴ちゃん(8)はこの日初めて参加した。前夜は少しワクワクしながら9時に寝て、朝は4時起き。小学生の兄2人とともに母の千秋さん(37)に車で連れられてやってきた。剣道は1年生の夏に始めた。
大人の中で最初は勝手がわからず戸惑っていたが、ランニング、準備運動、素振りを終え、正面打ちと連続の左右面打ちを織り交ぜる「切り返し」が始まると調子に乗ってきた。基本動作を延々と繰り返す。「得意。楽しいよ」
次は「かかり稽古」。子どもたちは先生や先輩から一本とろうとかかっていく。低学年の小さい子だろうが、女の子だろうが、大人は手を抜かない。かわされ、体当たりされ、床にたたきつけられる。身長131cmの未鈴ちゃんは何度となくひっくり返るが、すぐに起きあがって再び立ち向かう。
大丈夫?いまにも泣き出しそうだったが、「吹っ飛ばされても、逆に体があったかいよ」と意地を張った。周りを見回しても涙を見せる子はいない。

4年生の辻田依里子ちゃん(10)は1年生の時から参加している。初の皆勤をめざしたが、あまりのきつさに38度の熱が出て2日間だけ休み「去年はインフルエンザでだめだった。来年こそ皆勤したい」と悔しそう。今年初めて皆勤した中学2年生の大北友海さん(14)が思いを代弁してくれた。
「練習は毎日泣きそうになるぐらいつらい。でも試合で勝ったときの喜びはその辛さを忘れさせてくれる。だからがんばる。」
剣道部師範の作道正夫さん(同大学教授)によると、剣道には試合に勝ち負けという競技の面だけでなく、古来、精神の鍛錬、人間形成の道という役割がある。寒稽古もその習わしの一つだ。「外から見れば『いじめ教室』と映るかもしれませんが、自分の弱さとしっかり向き合い、豊かさ、便利さの中で見失いがちな、人間として生きる力を引き出してあげたい」

最後は5人一組になり、2人ずつ交代で打ち合う「相がかり稽古」。未鈴ちゃんと依里子ちゃん、福島庸希君(10)、高田廉君(9)、吉田颯貴君(8)がいっしょの組。「イーヤーハー」「エイッ、トウ」。未鈴ちゃんも大きなかけ声を出す。すきをつき、竹刀を振り下ろす。いつの間にか7時半過ぎ。もうすっかり明るい。
「転ばされても、倒されても、一生懸命に『もう一本』と打ち込んでいった時の気持ちを忘れず、稽古に勉強に頑張ってください」
作道師範がこう締めくくり、全員が肩を組んで大きな円陣ができると、この日初めて子どもたちの笑顔がはじけた。どの顔も、一つのことをやりとげた満足感できらきらしていた。
吉田君は「コテがうまくなった。友だちもできたし」とニッコリ。未鈴ちゃんも「いろんなことが学べた。厳しかったけど、また行きたいな」。来年も自分への「挑戦」が続く。(桜井林太郎)
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by ouhs-kendo | 2007-02-28 19:59 | お知らせ | Comments(0)